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闘魂 サバイバル生活者のブログ

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ブログの原点 その1

本日の株式日記と経済展望のリンク元、泉の波立ちがいい。あまりにも本来の関心領域とピンポイントで重なっているので、原点の確認のために全文引用。

「派遣社員の問題の本質」について ニュースと感想  (6月15日)

オタク殺人事件の犯人が派遣社員だった(しかも契約切れになると思い込んでいたらしい)ことが、殺人の動機の一員だったらしい。そのことから、「派遣社員制度をなんとかせよ」という見解が広がっている。しかし、これは妥当ではない。

 (1)
 「派遣はちっとも悪くはない」というフリードマンの理屈はおかしいし、経営者の理屈もおかしい。なかんずく、普通の正社員が言うのは、ちゃんちゃらおかしい。本当に彼らの見解が妥当であるのなら、彼ら自身が派遣社員になってしまえばいいのだ。たとえば、派遣社員としての社長。派遣社員としての新聞社員。派遣社員としての大学教授。  (^^);
 「労働市場は自由化するのが当然だ」なんて主張する大学教授がいたら、彼の身分をさっさと一年限定の任期制教授に買えてしまうべし。ついでに、身分を「派遣教授」にしてしまう。 (^^);
( ※ 「社長の派遣は? 派遣社長? そんなのあるの?」という質問には、「経営コンサルタント会社が送ってくれる」と答えよう。マッキンゼーのような会社が、中小企業向けに社長を派遣してくれたりする。マッキンゼーに支払われる金はべらぼうになるが、派遣社長が受け取る金はあまり高くない。これも似てますね。  (^^); )

 (2)
 「派遣社員の賃金が正社員の社員と同じでないのは、日本ぐらいのものだ。他の先進国では『同一労働・同一賃金』が実現している。だから、そうするべし」
 という見解もある。それはそれでもっともなのだが、日本では「終身雇用制・年功給」というのがあって、「職務給」とは違うから、ちょっと微妙である。
 そもそも、こういうふうに「公定賃金」ふうの制度にするのがいいのかどうかも、微妙である。
 ま、そういうふうにして、悪いことだとは言えないが、問題の根源がそれだとは思えませんね。なぜなら、次のようになりかねないからだ。
 「正社員の賃金を派遣社員に賃下げする」
 こうなる可能性は、非常に高い。「派遣社員が犠牲になっているから、正社員は人並みの生活が送れる」という面がある。「同一賃金」にすれば、「派遣社員が正社員並みになる」と思うのは、早計であろう。

 (3)
 実は、派遣そのものは、「低賃金」を意味しない。実際、バブルのころには、季節工は正社員よりも高所得だった。派遣社員も同様の傾向にあるだろう。それが意味するのは、こうだ。
 「派遣社員は、需給の状況を、鋭敏に繁栄する」
 比喩的に言えば、寿司の「時価」みたいなものだ。もっと正確に言えば、石油の「スポット相場」(その時点での現物市場の相場)みたいなものだ。長期契約の石油は固定されているが、スポット相場の価格は需給を反映して、急上昇したり、急下落したりする。
 派遣社員も同様だ。好景気のときには賃金が上がるし、景気低迷のときには賃金が下がる。それだけのことだ。

 (4)
 以上のすべてを勘案すれば、結論は明らかだ。
 「マクロ政策によって、景気全体を好況にすること」
 本質的に言おう。日本全体では、不況によって、生産効率が落ちている。(稼働率の低迷などで生産効率が悪化する。)
 ここでは、企業に赤字が生じる。その赤字を、誰が負担するか? 
  ・ 企業が負担する。(最初はそうだった。企業の決算は赤字。)
  ・ 中高年が負担する。(次はそうだった。中高年が次々と解雇された。)
  ・ 若者が負担する。(その次はそうだった。中高年の後釜で派遣社員で低賃金。)
  ・ 正社員が負担する。(やがてそうなるかもしれない。全社員の賃下げ。)

 ここまで考えればわかるだろう。問題の解決は、「誰が赤字を負担するか」ということではない。企業か、中高年か、若者か、正社員か? そのいずれでもない。国全体の赤字そのものを解消することだ。「誰が赤字を負担するか」ということではなく、「赤字そのものをなくすこと」だ。
 こうして、「マクロ政策こそが正解だ」とわかる。

 結語。
 派遣社員の問題を解決するために、「派遣社会をなくせばいい」という発想は、根本的に狂っている。もっと根源を解決するべきだ。
 比喩的に言えば、「風邪を引いて病人になるのは、誰にするのが公正か?」と考えるのではなく、「誰も風邪を引かないようにするべきだ」と考えるべきだ。
 しかしながら、たいていの人は、そこに気がつかない。だから今も、「波形社員の待遇を改善せよ」なんてことばかり考えている。

[ 補説 ]
 派遣がはびこる理由については、別の面もある。
 そもそも、単純な派遣というものは、成立しがたい面がある。このことは、次のことからわかる。
 「派遣業者の意義は、ただの労働仲介である。そんなものは情報過剰の現在では、ほとんど意味がない。たとえば、an(元アルバイトニュース)のような雑誌や、ホームページなどで、アルバイトを募集すれば、いくらでも安価にアルバイトを雇用できる。この場合、直接雇用となるが、3割~5割にもなる仲介料を派遣業者に払わないで済むから、(広告料を差し引いても)、大幅な労働コスト削減が可能だ。だから、本来、雇用主は暴利を得る派遣業者などを利用するはずがない」
 これが原則である。また、この原則を信じた経済学者が、「派遣業者の仲介料は市場原理で極小化されて、せいぜい労働管理コストとしての1割ぐらいにしかならないだろう」という見込みを出すことになる。

 しかるに現実には、そうはならない。3割~5割にもなる仲介料を派遣業者が受け取る。では、なぜか? 次のことがあるからだ。
 「直接雇用にすると、不当労働行為に対する責任が事業者に発生する。違法な危険な行為をさせて損害が発生した場合、事業者がその責任を負担しなくてはならない。しかし、派遣社員を利用した場合には、派遣業者に責任を転嫁できる。その後、事故や怪我が発生したら、労災に回すので、事業者も派遣業者も負担を免れる」
 この本質は「リスクを自分で負担しないこと」である。つまり、「リスクを国民全体に転嫁すること」である。
 具体的な事例で示そう。旋盤工場で旋盤を動かしていたとする。ただし機械の操作で指を切る恐れもある。正社員を雇用していた場合には、指を切らないように、いろいろと安全面で管理する必要がある。アルバイトでも、同様だ。能率が低いくせに怪我をする危険があるから、下手なアルバイトを雇うわけには行かない。しかし、派遣なら別だ。払う金はアルバイトよりも少し高くなる。しかし、責任は派遣業者に移るから、派遣業者に発注する。その後、実際に指を切ってしまい、指をなくす派遣労働者も出るが、事業主は知ったこっちゃない。派遣業者の責任にする。派遣業者は労災でまかなう。……こういう結果になることがわかっているから、事業主は安全対策に徹底的に手抜きをして、事故が続発するような危険な環境を維持し、その分、コストを下げることができる。
 これは別に、架空の例というわけでもない。「危険な環境で衣服がボロボロになった例」や、「指が怪我をしても治療を受けられなかった例」が、報道されている。(朝日・朝刊・派遣特集 2008-06-12~13 )
 要するに、このことは、「リスクを国民全体に移転すること」であるが、その本質は、「事業主と派遣業者がグルになって、他者の富を奪うこと」である。そして、誰が奪われるかというと、危険にさらされる派遣社員と、リスク負担を転嫁される国民全体だ。この両者が損をすることで、事業主と派遣業者が利益を得ることができる。
 これは「一部の弱者と国民全体から富を盗むこと」に相当する。しかも、合法的だ。(悪法もまた法なり。)
 要するに、派遣がはびこることの理由は、「合法的な泥棒」である。

 ただし、こういう悪党は、本来は淘汰されるべきものだ。なのに、なぜ、悪党が大手を振ってまかり通るのか? 法律のせいか? そのせいでもあるが、根源は、次のことだ。
 「労働市場における供給過剰」
 つまり、労働供給(労働者)があまりにも過剰だからだ。その理由は、こうだ。
 「労働市場における需要不足」
 つまり、景気低迷により、労働需要が激減している。労働者の総数は 昔よりも減っているのに、労働需要が大幅に減少しているのだ。……このせいで、結果的に、需給は「供給過剰・需要不足」となる。
 かくて、仕事先を見つけなくてはならない労働者は、劣悪だとわかっていても、そういう劣悪な仕事先でイヤイヤながら勤務しなくてはならない。なぜなら、そこをやめても、もっといいところなどはないからだ。(あったとしても、人気殺到で、すぐに埋まってしまう。)

 ついでに一言。物事の根源は、どこにあるか? それは、「市場原理」という発想そのものにある。「市場原理」という概念そのものは成立するだろうが、「市場原理ですべて片付く」という「市場原理主義」は成立しない。なぜなら、次のことがあるからだ。
 「景気の悪化したときには、すべてが劣者となる。劣者だらけのところでは、優勝劣敗などはありえない」(拡大するべき優者がいないから。)
 このことは労働市場の事業者についても成立する。「劣悪な事業者は労働者に見放されるので、劣悪な事業者は淘汰されてしまう」と言うことは、本来ならば成立する。しかし、景気低迷時には、成立しない。なぜなら、「まともな労働環境を提供する事業者などはない」からだ。たとえば、莫大な利益を吐き出す超優良企業のキヤノンでさえ、偽装請負をするほどだ。他は、推して知るべし。(トヨタだって、ひどい労働環境にあることが知られている。)

 結語。
 地獄のなかでどうあがこうと、地獄は地獄だ。個人に解決できるとしたら、良心を捨ててひどい鬼になり、他の鬼の血を吸い尽くすことだけだ。吸血鬼のように。……だから、国全体がなすべきことは、「みなさん努力しましょう」と言って、血の吸い尽くしあいを推奨することではなくて、地獄という状況そのものを解決することだ。


成果主義の導入はまさに赤字を正社員が背負う仕組みですね。年功賃金・終身雇用は、少なくとも大手はとっくの昔に放擲してしまっているんですよ。リストラは制度的に残っているし、非正規雇用の非人間的な生活はたえずメディアを通して目に入る。つまり、絶えざる賃金抑制圧力とリストラ圧力にさらされていて、だから鬱病は蔓延し、自殺者は3万人をくだらない訳なんです。上記記事は、成果主義に関する記述がすっぽり抜けているんですが、これについては、また、ピンポイントで重なる記事を見つけたときに、この場所に掲げましょう。


2008年6月22日 根賀源三



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